東京都で公正証書遺言を作成する際の費用とは?具体的な事例で解説

東京都にお住まいの皆さま、大切なご家族のために「公正証書遺言」の作成を検討されていますか?将来への備えとして、遺言書を残すことの重要性は理解しつつも、「費用はどのくらいかかるのだろう?」「手続きは複雑なのでは?」といった疑問や不安をお持ちの方も少なくないでしょう。特に、東京都内で作成するとなると、多くの専門家や公証役場が存在するため、どこから手をつければ良いのか迷ってしまうかもしれません。

この記事では、東京都で公正証書遺言を作成する際の費用に焦点を当て、具体的な内訳や相場、さらには費用を抑えるためのポイントまで、分かりやすく解説します。安心して作成できるよう、一歩を踏み出すお手伝いができれば幸いです。

公正証書遺言を作成したいあなたの実情を理解します

「家族が将来、遺産を巡って争わないようにしたい」
「長年連れ添った配偶者に、安心して暮らしてもらいたい」
「事業を継ぐ子どもに、スムーズに財産を承継させたい」
「お世話になった特定の人に、感謝の気持ちを形にして残したい」

公正証書遺言の作成を考える方の背景には、実に様々な思いや事情があります。その根底にあるのは「残される家族への深い愛情と配慮」です。例えば、再婚されていて、前妻(夫)との間に子どもがいる場合、あるいはご自身に身寄りがなく、特定の友人に財産を残したいと願う方もいらっしゃいます。

しかし、いざ遺言書作成を考え始めても、「どこから手を付ければいいのか」「法律は複雑そう」といった心のモヤモヤを抱えてしまうものです。特に費用については、明確な情報が少なく、不安を一層募らせる要因になっているのではないでしょうか。遺言書は、単なる法的書類ではなく、あなたの生きた証であり、未来へのメッセージとも考えられます。

どのくらいの費用がかかるのか?

公正証書遺言の作成にかかる費用は、主に「公証役場の手数料」と「専門家への報酬」の二つに分けられます。東京都内のどの公証役場を利用しても、公証役場の手数料は全国一律の基準で定められていますのでご安心ください。

1. 公証役場の手数料

公証役場に支払う手数料は、遺言書に記載する財産の目的価額(遺言によって与えられる財産の金額)に応じて変動します。これは、遺言書で財産を「相続させる」「遺贈する」と指定された各人ごとに、その受け取る財産の価額によって計算されます。具体的な手数料の目安は以下の通りです。

  • 50万円以下:3,000円
  • 50万を超え100万円以下:5,000円
  • 100万円を超え200万円以下:7,000円
  • 200万円を超え500万円以下:13,000円
  • 500万円を超え1,000万円以下:20,000円
  • 1,000万円を超え3,000万円以下:26,000円
  • 3,000万円を超え5,000万円以下:33,000円
  • 5,000万円を超え1億円以下:49,000円

※財産額が1億円以下の場合は、13,000円の遺言加算が追加となります。その他にも祭祀主催者を定めた場合の加算や撤回する際の加算等がありますので手数料の正確な金額は公証役場にお問い合わせ下さい。

例えば、長男に2,000万円、長女に1,000万円を遺贈する場合、それぞれの手数料を計算し合算します。この場合、長男分が26,000円、長女分が20,000円となり、遺言加算が加わり合計で46,000円が基本的な手数料となります。※この他、正本・謄本又は電子データの発行手数料が発生します。

また、いくつかの追加費用が発生する場合があります。

  • 証人2人分の費用:公正証書遺言の作成には証人が2人必要です。通常、専門家が証人を引き受ける場合、1人あたり5,000円~10,000円程度の費用がかかることが多いです。
  • 公証人の出張費用:遺言者が病気などで公証役場に出向くことができない場合、公証人が病院や自宅に出張して作成することも可能です。この場合、手数料が1.5倍になるほか、公証人の日当(1日2万円、4時間以内1万円)と交通費が別途発生します。

2. 専門家への報酬(行政書士など)

遺言書の原案作成や公証人との調整など、手続きのサポートを専門家に依頼する場合、その報酬が発生します。専門家には行政書士などがいますが、報酬額は依頼する事務所や遺言内容の複雑さ、財産規模によって大きく異なります。

  • 行政書士の場合:遺言書原案の作成や公証役場との打ち合わせ代行などが主な業務です。一般的に10万円~20万円程度が相場ですが、相談内容や複雑さによって変動します。

東京都内には多くの専門家がいますが、事務所の所在地(例えば大田区や世田谷区など)によって多少の地域差はあるものの、報酬基準は各事務所の裁量によるところが大きいです。初回無料相談を実施している事務所も多いため、まずは相談してみることをお勧めします。

費用を抑えるためのポイントとは

公正証書遺言の作成費用は、決して安価ではありません。しかし、いくつかの工夫をすることで、費用を賢く抑えることが可能です。

1. 自分でできる準備を徹底する

専門家や公証役場に相談する前に、自分でできる準備をしっかり行うことが、費用を抑える上で最も重要です。

  • 財産リストの作成:不動産(所在地、地番、家屋番号、評価額など)、預貯金(金融機関名、支店名、口座番号)、有価証券、自動車、高価な動産など、全ての財産をリストアップします。相続人情報も正確にまとめておきましょう。
  • 遺言内容の具体化:誰にどの財産をどれだけ渡したいのか、具体的な希望をある程度固めておきます。漠然とした状態だと、専門家との相談時間が長くなり、その分報酬も高くなる可能性があります。

これらの準備を事前に済ませておくことで、専門家との相談時間を短縮でき、スムーズな手続きにつながります。

2. 複数の専門家から見積もりを取る

行政書士の中には、初回無料相談を受け付けているところも多いです。数カ所の事務所に相談し、見積もりを比較検討することをお勧めします。費用だけでなく、専門家の対応や人柄、実績なども考慮して、信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。

3. 費用対効果を考える

「費用を抑える」ことは重要ですが、費用が安ければ良いというわけではありません。遺言書は、あなたの意思を確実に、かつ法的に有効な形で残すための大切な書類です。初期費用を惜しんで、将来的に遺産分割を巡る「争族」が発生してしまえば、弁護士費用や家庭裁判所の調停・審判費用など、はるかに高額な費用がかかる可能性があります。

公正証書遺言の作成にかかる費用は、むしろ未来の家族への安心と平和のための「投資」と捉える視点も重要です。専門家に依頼することで、遺言書の法的有効性を確保し、無用なトラブルを未然に防ぐことができます。この「安心」には、費用以上の価値があると言えるでしょう。

公正証書遺言の作成を始めるためのステップ

「よし、公正証書遺言を作成しよう!」と決意したら、あとは具体的なステップを踏むだけです。多くの方が感じている「複雑そう」というイメージも、専門家と協力することで、驚くほどスムーズに進みます。

ステップ1:遺言内容の検討と財産リストの作成

まずは、誰に、何を、どれだけ残したいのか、ご自身の希望を具体的に整理しましょう。そして、所有する全ての財産(不動産、預貯金、株式、自動車など)をリストアップし、それぞれの評価額を把握します。これは、遺言書の骨格を作る上での最も基本的な作業です。

ステップ2:専門家への相談

整理した内容を基に、行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。専門家はあなたの希望を法的に有効な形に整理し、遺留分などの法律上の注意点も踏まえて、遺言書の原案作成をサポートしてくれます。東京都内には多くの専門家がいますが、相続や遺言書作成の実績が豊富な事務所を選ぶことがポイントです。

ステップ3:公証役場との打ち合わせと必要書類の準備

専門家が、公証役場との事前打ち合わせを行い、遺言書作成の日程を調整します。同時に、以下の必要書類を準備します。

  • 遺言者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 遺言者と相続人の関係を示す戸籍謄本
  • 財産に関する資料(不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書、預貯金通帳のコピーなど)
  • 証人2人に関する情報(氏名、住所、生年月日、職業)

ステップ4:証人の手配

公正証書遺言の作成には、証人が2人必要です。専門家に依頼している場合、通常は専門家が手配してくれます。ご自身で手配することも可能ですが、遺言の内容を知られることになるため、信頼できる人に限られます。

ステップ5:遺言書の作成と署名・押印

予約した日時に公証役場に出向き、公証人、専門家(証人)、そしてご本人の立ち会いのもと、公証人が遺言書を読み上げます。内容に間違いがないことを確認し、ご本人が署名・押印すれば、公正証書遺言は完成です。

公正証書遺言作成にかかる期間は、内容の複雑さや書類準備の状況にもよりますが、通常、相談から完成まで1ヶ月から2ヶ月程度が目安です。

公正証書遺言の作成は、確かに費用と手間がかかります。しかし、それによって得られる「家族の安心」という計り知れない価値は、何物にも代えがたいものです。ぜひ、今日から一歩を踏み出してみませんか。ご不明な点があれば、お近くの専門家にご相談ください。

著者情報

花形 豊
花形 豊
ローブル行政書士事務所の代表行政書士、花形 豊です。 当事務所は「むずかしい手続きを、やさしい言葉で。」をモットーに、大田区・大森を中心に相続・遺言手続きのサポートを行っています。
行政書士(登録番号:25086165)